飛行機を利用する機会のある方であれば、空港のラウンジというものを見聞きしたことがあるのではないかと思います。そして、「ラウンジって誰が、どうやったら使えるの?」と考えたことがある人もいるのではないでしょうか。今回は、そんな疑問を解消するとともに、ラウンジ利用権を取得できる航空会社の上級資格について話していきたいと思います。
ラウンジを利用できる人とは
航空会社各社の空港ラウンジを利用している人は、基本的に以下いずれかに該当する人になります。
①フライトの搭乗クラスがファースト、ビジネス、プレミアムエコノミー
②航空会社の上級資格者およびその同行者
例)ANAの場合、プラチナ、ダイヤモンドと呼ばれる資格。前年の搭乗実績で決まる。
この一覧をみると、ラウンジに入るのは非常に難しいのではないか、と感じるのではないでしょうか。正直、その感覚は間違っていないでしょう。①の航空券は非常に高価ですし、②は前年度に相当な数のフライトをしないと取得できません。しかし、ここで諦めるのは、時期尚早。人生に一度、フライトを沢山する年を作ることで半永久的にラウンジ利用権ほか、多くの便益がある資格を取得できます。
上級資格のひとつ「スーパーフライヤーズカード」
今回は、筆者が10年ほど前に取得したANAのスーパーフライヤーズカードという資格を例に話していきます(JALにも類似する資格があります)。
スーパーフライヤーズカード(以下、SFC)というのは、前年度に一定の条件を満たすことで翌年から入会できるクレジットカードを指します。(例:2024年に条件達成→2025年から入会可能)条件の達成度は、ANAの場合「プレミアムポイント」というポイントで管理されており、フライトの行き先、搭乗クラス、航空券種別などに基づいて計算されます。何回フライトしたか、というシンプルなものではなく、ちょっと複雑な計算式があるというわけです。
【計算式】
「区間基本マイレージ」×「クラス・運賃倍率」×「路線倍率」+「搭乗ポイント」
区間基本マイレージ:移動距離に基づく。羽田→沖縄 984マイル、羽田→伊丹 280マイルなど
クラス・運賃倍率:購入する航空券の種類に基づく。割引適応などは本係数が小さくなる。
路線倍率:国内線は2倍、日本発着アジア便などは1.5倍、それ以外の国際線は1倍。
搭乗ポイント:クラス・運賃倍率と同様航空券種類に基づく。割引適応などは本ポイントが無い。
この式に則って、1年間(当年 1月1日~12月31日)のフライトがそれぞれ計算され、50,000ポイントが貯まると晴れてSFCの入会資格を手に入れることができます。そして、SFCが素晴らしいのは、この資格を1度手にすれば、生涯保持し続けることができる点です。当該航空会社のフライトを使う際は、いつでもラウンジが使えるようになります。保持し続けるための唯一の条件は、ANAの有料クレジットカードを持つこと。ゴールドであれば、年会費16,500円となります。決して安価ではないですが、更新の度にマイルがもらえたり、マイル取得時の積算率が良くなったりとメリットも多く存在しますので個人的には満足しています。
50,000ポイントを貯めたSFC修行体験談
前述の通り、筆者は約10年前にSFCを取得するためにひたすら飛行機に乗りました。所謂、「SFC修行」というものです。50,000ポイントと言われても、それがどれほどのものか分かりづらいと思いますので、実体験をもとに取得までの道のりをご紹介します。
国際線
当然、国際線の方が国内線よりも長距離になるので区間基本マイレージは大きくなります。しかし、路線倍率が1.5倍または1倍になってしまうのがネック。そこで、国際線の修行では以下を条件として行き先を考えました。
・路線倍率が1.5倍のアジア圏
・アジア圏のなかでは遠い国
・できれば、観光地としても楽しい
そして、導き出されたのはシンガポール。細かいポイントまでは履歴として残っていないので概算としてお伝えします(以下同様)。
行き先1:シンガポール①

旅程:0泊3日(機内泊2日)
獲得ポイント:5,368ポイント×2(往復)=10,736ポイント
累計ポイント:10,736ポイント
補足:クラス・運賃倍率を上げるためにプレミアムエコノミーを選択
修行と言いながら、これは非常に楽しい旅となりました。金曜日の深夜に東京を出発して、土曜日の朝にシンガポール到着。マーライオン、マリーナベイサンズ、ナイトサファリなどを観光した後、その日の深夜にシンガポールを出発して日曜日の朝に東京に到着。仕事を休むことなく、週末のみで海外旅行を満喫できちゃいました。
辛かったのは2回目の渡航。ポイントを貯めるために効率が良いので、翌月に同じ旅程をもう一回実施しました。
行き先2:シンガポール②
旅程:0泊3日(機内泊2日)
獲得ポイント:5,368ポイント×2(往復)=10,736ポイント
累計ポイント:21,472ポイント
補足:クラス・運賃倍率を上げるためにプレミアムエコノミーを選択
行き先3:インドネシア・ジャカルタ

旅程:3泊4日
獲得ポイント:5,818ポイント×2(往復)=11,636ポイント
累計ポイント:33,108ポイント
補足:クラス・運賃倍率を上げるためにプレミアムエコノミーを選択
さすがにシンガポールには飽きてしまったので、東南アジアで新たな国を検討。行ったことの無い国で、距離が稼げるという条件で絞って、インドネシア・ジャカルタに辿り着きました。せっかくなら、観光も兼ねたいと思い、長期休暇を使って渡航。シンガポールと比べるとゆとりあるスケジュールとなりました。
行き先4:ハワイ

旅程:3泊4日
獲得ポイント:1,915ポイント×2(往復)=3,830ポイント
累計ポイント:36,938ポイント
続いて向かったのはハワイ。これは観光が目的だったので、ポイント獲得の効率は度外視でした。取得ポイントを見て頂くと分かりますが、いかにシンガポールやインドネシアの獲得効率が良いか分かります。
行き先5:中国・上海

旅程:2泊3日
獲得ポイント:833ポイント×2(往復)=1,666ポイント
累計ポイント:38,604ポイント
国際線最後は中国・上海。これは唯一、仕事関連での渡航でした。
国内線
国内線は路線倍率が一律2倍なので、できるだけ遠い場所を選びました。SFCになることが目的でしたので基本的に観光は無し、日帰りです。目的地の空港に到着後、空港で数時間を過ごして帰路に就くスケジュール。しかも、ポイントが多い、すなわち遠距離な場所がメインになりますので同じ空港にも何度か足を運びました。今後の人生で経験することは無いと思います。
行き先1:沖縄①
旅程:日帰り
獲得ポイント:1,476ポイント×2(往復)=2,952ポイント
累計ポイント:41,556ポイント
行き先2:沖縄②
旅程:日帰り
獲得ポイント:1,476ポイント×2(往復)=2,952ポイント
累計ポイント:44,508ポイント
行き先3:福岡
旅程:日帰り
獲得ポイント:850ポイント×2(往復)=1,700ポイント
累計ポイント:46,208ポイント
行き先4:新千歳①
旅程:日帰り
獲得ポイント:765ポイント×2(往復)=1,530ポイント
累計ポイント:47,738ポイント
行き先5:新千歳②
旅程:日帰り
獲得ポイント:765ポイント×2(往復)=1,530ポイント
累計ポイント:49,268ポイント
行き先6:伊丹
旅程:1泊2日(空港滞在)
獲得ポイント:420ポイント×2(往復)=840ポイント
累計ポイント:50,108ポイント
振り返ってみて
とても無謀な挑戦でしたが、若いうちに経験できたのは良かったかなと感じました。始めた当初は、「早い段階で何かの優遇を得られたら、人生でメリットを沢山得られるのではないか!」という軽い気持ちでした。結果的には、その考えは間違っておらず、翌年以降は快適に旅行を楽しめるようになりました。空港には専用の受付カウンターがあるので、あまり並ばずにチェックインができますし、ラウンジにいけばドリンクやフード(国際線のみ)を提供してもらえます。
体力的にも、経済的にも決して楽な修行では無いので、これからSFCを取得したいと思っている方は、この記事も参考にしながら実行するか否かを判断して頂けたらと思います。
巷には、1ポイントあたりの単価を最小限にして、SFCを取得する方法なども出ていますので、コストを削減したい方にはそのような記事の参照をおすすめします。
以上、総移動距離6万キロ超、計22本のフライトでSFCを取得した体験記でした。